言葉の中の本音
利用者様が誰かと会話をしている。しかし、そこには誰もいない。高齢者施設ではよく見る光景だ。
入所間もないA様の場合は、ベッドに臥床された途端に見えない誰かと会話が始まる。「みんながね、ボソボソボソ、色々と探してくれたんだけどね、ボソボソボソ、~、~、~、~」と。
このとき、言葉の中にA様の本音が見え隠れする。聞こえてくる言葉をつなぎ合わせ、本当は家に居たかったことがわかった瞬間、私の心に大雨が降る。だよね、だよね、と思う。
本来ならば、時間をかけて丁寧にコミュニケーションを図り、新しい環境に対する不安を取り除いて差し上げるのが介護職の役割と考える。しかし、現実はそこまで出来ない。そこに時間をかけると他の仕事、他の職員の足を引っ張るからだ。できることは、A様に対する何かの介助のときにそっと心に触れる。それだけで精一杯だ。
施設には相談員がいる。その相談員こそ、新しい利用者様のフォローに入っても良さそうだ。だが、こちらも仕事が山積みで手が回らないようで、せいぜい10分程度話を聞くだけだ。
上手いこといかないね。