高齢者施設で働くということ

仕事のことをメインに、日常生活でおやおや?と思ったことや、どうでもよいことなど、約1億2600人のうちの一人のつぶやき。

トランス


ご利用者をベッドから車椅子へ移乗する介助、ご利用者を車椅子からベッドへ移乗する介助、これを業界用語でトランスと言う。

このトランスを先輩職員はヒョイヒョイと行う。あまりにもヒョイヒョイ、と介助するので簡単そうに見える。だが、トランスには多くの危険が潜んでいる。車椅子を使用されているということは、下肢に麻痺などの障害があるということである。車椅子⇔ベッドのトランスにおいて、動かない下肢が取り残されてねじれたり、絡んだりる恐れがある。つまり、介助者が何も考えずにトランスをした場合、怪我や骨折につながるのだ。下肢だけではない、上肢も巻き込む恐れがある。また、介助者がバランスを崩せば、一緒に倒れこむなどの一大事になる。非常に危険な介助の一つだ。

さらに、このトランスは介助者の腰に大きな負担となる。そのため、ボディメカニズムという力学的原理を活用した介護技術を必要とする。
例えば、
・てこの原理を応用する
・対象者にできるだけ近づく
・介助者の両足を広げて膝を曲げ、腰を落とす(重心を下げる)
・腕で持ち上げるのではなく、膝の屈伸を利用する
・体をねじらず、水平移動させる
などが挙げられる。

リスクを考慮しながら、ボディメカニズムを使い、トランスを行う。頭では解かっているが、いざやってみると難しい。また、利用者様は障害の程度、麻痺の部位、特徴、など一人ひとり違うため、個別性に合わせたトランス介助を行う必要がある。ヒョイヒョイやっているように見えるが、実は大変なことなのだ。