介護の楽しさを知った気がした瞬間
ご利用者のAさんから手招きされたので伺うと、私の手を握って耳元でこう囁かれた。
「お願いがあります。あとでお礼をしますから」と。
神妙な面持ちでコソコソと言われると、やだ、すごく気になる。
なにお礼って。何をいただけるのかしら、ワクワクしちゃうじゃないの。
そして、「これ、捨ててくださる?」と。
見るとそれは、お茶が並々と注がれたコップだった。
しかも、何かの罰ゲームかっ!ってかんじの、いまにも溢れそうな表面張力ね。
「あとで必ず、必ずお礼をしますから。ね。」と、周囲の目を気にされながらコソコソおっしゃる。ふふふ、昔のAさんは賄賂が得意だったのかしら?
プルプル震えながら、捨てさせていただきましたとも。
案の定、床にこぼしちゃったけれども。
その2時間後に、「○○さ~ん、先ほどのお礼はいついただけるのですか~?楽しみにしているんですけど~♪」と聞いてみると、「え?なに?なんの話?」と。
ふふふ、なんだか介護の楽しさを知った気がする。